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キョン →キョン、キョン子、キョー子、キョン姉、キョンちゃん 主人公。 一人称:私、あたし 茶色の長髪をポニーテールにしている。ダルデレ。男言葉で話す? 制服の上にカーディガンを着ている。ボタンは一番上だけつけてる。 (過去に行った際、ハルヒコに「ジェーン・スミス」と名乗った。身長158センチ。県立北高校1年5組。Bカップor貧乳) CV.(豊口めぐみ、伊藤静、沢城みゆき、茅原実里、坂本真綾、杉田智和)
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174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 16 53 41.79 ID PpLiQoWH0 つたない文章かもしれんが、付き合ってくれ ライトアップされていた周りの風景が一瞬にして暗くなる。 息が苦しい。息をしようと口をあけると何か液体が入ってきた。水中? 頭上に微かな光。 手を懸命に動かし、真っ暗な海の底からやっとのことで海面から顔を出すことができた。 と同時に目が覚めた。 夢か… 体を起こす。 ん?ここはどこだ? 「キョンくん。ご飯~」 そういいながら女の子が入ってきた。 女の子は驚いたような目で俺を見つめ、 「お母さ~ん。キョンくんがへ~ん。もう起きてる」 とすぐに出て行ってしまった。 キョン…それが俺の名前?今気づいた。名前も分からない。 寝起きで頭が回転していないのだろうか。頬を何度か叩くが、全く思い出せない。 なんで? 頭を『記憶喪失』という言葉がよぎるが んなこたない、ととりあえずは成り行きにまかせて振舞うことにした。 ボケが来るには早すぎる。すぐに思い出すだろ。 なぜこんなに素直に受け入れることができたのかわからなかったが、 後になって考えれば、記憶喪失と同じくらいひどい状況を 何度も潜り抜けてきたから、かもしれないと思う。 175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 17 02 14.22 ID PpLiQoWH0 朝飯を食べ、制服(らしきもの)に着替え家を出る。 …さてどっちだ?どっちに行けばいい? そう思っていると、タクシーが家の前に止まった。 反対側のドアから俺と同じ制服を着た男が出てきた。 「奇遇ですね。よかったら乗っていきませんか?」 なんてタイミングの良さだ、と不思議に思うが、 今の俺の状況からしてこの提案を断る理由はない。 タクシーの中で、そいつは良くしゃべった。 学校のこと、特に部活についてよくしゃべっていた。 俺はというと、何も思い出せないので、相槌を打つだけだ。 …『SOS団』? なにやら『世界をおおいに盛り上げるための涼宮ハルヒの団』らしい。 なんだそりゃ?何で俺はそんなわけのわからん部活に入っている? 正常な精神の持ち主なら笑い飛ばしていただろうが、 何せ今俺は正常ではない。 かくいうこいつだって、そんなわけ分からん部活に入っているんだから 気がしれん。 176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 17 06 29.95 ID PpLiQoWH0 1年5組の下駄箱から自分の名前を見つける。 『SOS団』というおかしな部活について聞かされたが、 それ以外の情報は今の俺にとって天の恵みだ。 よくしゃべる奴で、時々顔を近づけてきたのは気持ち悪かったが… そういえば、あいつの名前を聞かなかったな。 ま、放課後になれば分かるか…って俺はこんな状況でも部活に行く気なのか。 そうだよな… せめて今日ぐらい休みをもらったって文句は言われないだろ? 「何で!どうして休むの!? あんたはSOS団団員のその一なのよ。その自覚はあるの? それにSOS団は年中無休。一人でも欠けることを許さないんだから。 休んだ分は休日の探索でのおごりについて回ってくるわよ。 それでもいいって言うなら、さぁ私に理由を説明してみなさいよ」 ちょっと待て。どうして俺はこんなに怒鳴られている。 177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 17 12 52.34 ID PpLiQoWH0 教室を見つけ中に入ると、朝のタクシーの男が言っていたように、 窓際最後列に黄色いリボンをした女の子が座っていた。 窓の外を見ていた女の子は、ガラスに映る俺の姿に気づくと 「遅い」 と口を尖らせながら言った。 かわいい。ものすごく美人だ。 髪の毛は肩までの長さだろうが、後ろで一つにまとめている。 そして、自分がSOS団に入ったのはこのせいだ、と確信した。 こんな美人が部長をやっている部活。 休むのを取り消したくなったが、高校生活は長い。 今日くらい休んでも先はある。 そう思い、話しかけたのだが… なんでもないです。行きます。 意味もなく敬語になるが、誰だってそうなるだろ? 「当たり前よ。休むなんて許さないんだから」 …前言撤回。なぜ入ってしまったんだろう… 178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 17 23 08.35 ID PpLiQoWH0 頭の中を必死でかき回してどうにか思い出そうとしている間に もう放課後になってしまった。 結局何も思い出せずじまいか。 「キョン。先に言ってて。私掃除当番だから」 了解です。 昼休みには、来ないと死刑、とまで言われた。 死刑は嫌だし、明日以降後ろから変なオーラを出されていても困る。 仕方なく部室へと足を運ぶ。 言われた部屋に着くと『SOS団』と書かれた紙が ドアの上に張られている。 反対側から見ると『文芸部』の鏡文字。 ドアをノックすると、は~い、というかわいらしい声が中からした。ノブを回す。 そこには、かわいらしい女の子がメイドの服装をしていた。 ホワイ!なぜ! 今一度ドアの文字を見るが『SOS団』と書かれている。 何をやっている部活なんだ。 179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 17 34 51.44 ID PpLiQoWH0 どんなあほ面をしていたのだろう。 その女の子は、不思議な顔をしていたが、やがて 「あ、そっか。キョンくん、ごめんなさい。」 とお盆を持ちながら頭を下げた。 何が?と聞こうかと思ったとき、 「おやおや、みなさんおそろいですね」 と声がした。朝のにやけ面だ。 二人しかいないのに何がおそろいなものか。 にやけ面は俺の脇をとおり本棚の前のいすに座る。 そこで気がついた。 今まで全くといっていいほど気づかなかったが、部屋の隅に女の子がもう一人座っている。 読書中らしくほとんど動かない。 「さぁこちらへ掛けてください。涼宮さんが来る前に説明しなくてはいけませんから」 何を言っているのか分からなかったが、とりあえずは言われたとおりにする。 メイド服の女の子も俺の隣に座る。 180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 17 47 25.10 ID PpLiQoWH0 「詳しい話は後にしますが、とりあえずは自己紹介ですね。 僕は古泉一樹です。はじめまして」 ちょっとまて。俺たちは初めましてじゃないはずだろ。 「そうですが。今のあなたにとっては『はじめまして』がふさわしいと思いまして」 どういうことだ。 「手っ取り早く済ませましょう。記憶がないのですよね」 …なぜ知っている。というより、まだ決まったわけじゃない。 「その話も後にします」 と手を俺の隣の女の子に向ける。 「あ…あの、初め…やっぱ変ですよね。こんにちは。 朝比奈みくるです。」 と最高の笑顔で応えてくれる。 メイド服姿というのもまた愛らしい。 「そして最後に」 と古泉一樹が読書娘に顔を向ける。 「………長門有希」 言葉を発するときのみ顔を上げたが、またすぐに本へ視線を戻した。 「名前だけ知っていれば、まぁ大丈夫でしょう。 あ、くれぐれも涼宮さんには内密に」 と人差し指を口に当てた。気色悪い。朝比奈さんなら許せるが、お前がやるな。 なぜ?と聞く前に、ドアが勢いよく開き本人が入ってきた。 「さぁ今日も張り切っていきましょう!」 181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 18 08 12.65 ID PpLiQoWH0 親に勉強もしないで何をしていた? と聞かれても納得させられるような回答はできない。 俺は古泉とボードゲーム。 涼宮さんは、パソコンをいじっていた。 たまに朝比奈さんにちょっかいを出していた時は 素直に俺も混ざりたいと思った。 朝比奈さんは、勉強。明日小テストがあるらしい。 長門さんはずっと読書。 俺の記憶にも『俺を探さないで何やっていた!』と怒られそうだ。 涼宮さん以外の人間は俺の状態を分かっているようだが、 涼宮さんは気づいていない。 今日一日、ばれないように過ごすために涼宮さんには気を使った。 …かと言えばそうでもない。機嫌が悪いのか全く話さなかったからな。 古泉とボードゲームをやりながら、明日は病院に行こうと思った。 日も沈み、下校時間が近くなり、 涼宮さんが「帰る」と支度をし始めると揃って帰り支度を始めた。 お前ら、何しにここへ来ている。 帰り道も特に何もなく、今の俺にとっては『初めての道』を歩いた。 朝比奈さんとの別れ際に 「7時に光陽園駅前公園で」 と耳元で言われたときには、にやけた顔を出さないように努力した。 俺もなかなか素敵な人生送ってたじゃないか。 やっべ寂しくなってきたwww誰かいたら辞めろとでもいいから罵ってほしいんだがwwww 187 名前:5番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 18 21 45.00 ID PpLiQoWH0 184了解 181 予想はしていた。 しかし、正直なところ期待していた。 誰だって期待するだろ。 女の子との待ち合わせ。夜の公園。 しかしだ。 …なぜお前がここにいる。 「詳しくは後で説明すると言ったでしょう」 待ち合わせ場所には私服の古泉が待っていた。朝比奈さん、長門さんもいる。 座っていた長門さんが立ち上がり、歩き出す。 つられて古泉、朝比奈さん、そして俺も。 豪勢なマンションの7階。 その一室でお茶を飲んでいる。 ここにくるまで誰一人として話さず、マンションの玄関を抜け、 エレベーターに乗り、この部屋の敷居をまたいだ。 長門さんの部屋らしいが家族の人は見えない。 「さて、僕がお話しすると長くなるでしょうから、 ここは長門さんにお任せしましょう」 と古泉が仕切る。 長門さんは持っていた湯飲みをテーブルの上に置くと、 じっと俺を見て話し始めた。 190 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 18 33 00.48 ID PpLiQoWH0 187 ……… ……… ……… 信じられない話の連続だ。 言葉を挟む間なく一気にまくしたてる長門さん。 それについて、一切、古泉と朝比奈さんは口を出さない。 口を出さないからといって、本当のことを言っているとは限らない。 3人とも電波な可能性もあるからな。 長門さんと古泉はいいとしよう。だが、朝比奈さんのことは…残念だった。 「ということです」 と古泉が『物語』の終わりを告げた。 長門(以前の俺は『さん』付けでなかったようだ)は 湯飲みを取り、お茶をすすり始める。 「ごめんね、キョンくん。信じられないかもしれないけど」 信じられないですよ、朝比奈さん。 今のこの状況よりもその『物語』を信じていた『以前の俺』のことがね。 191 名前:5番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 18 45 22.54 ID PpLiQoWH0 190 ということは、未来人である朝比奈さんが、俺の記憶喪失について知っていて 二人に相談した、ということでいいのですか? と一応分かった振りをして質問する。 「はい。あ、でも長門さんは気づいていたみたいですけど」 と横目でちらりと長門のほうを見る。 それを聞いた古泉が、わざわざ朝俺を迎えてくれ、学校その他もろもろについて 説明してくれた、というわけか。 「さすがですね。そのとおりです」 でも、記憶喪失を防ぐことはできなかったのですか? 前から知っていたのでしょう。 「それは、規定事項だからです」 わけわからん。が、なんとなく分かる気もする。 どうすればいい?どうすれば記憶が戻る? 「今から取り戻しに行きます」 どこへ? 「えっと…昨日の夜のキョンくんの部屋です」 帰ろうかと思った。付き合いきれん。 192 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 18 53 17.54 ID PpLiQoWH0 191 俺が立つ前に長門が立ち上がる。 「……時間」 朝比奈さんがあわてて時計を見る。 「あっ、あっ、ホントです。急がなくちゃ」 もう頭が痛い。 俺は記憶喪失だぞ。 それだけで頭が痛いって言うのに、どうしてこんなことに巻き込まれなくてはいけない。 意味もなく叫びたい気分になってきた。 …しかし、よく考えると記憶が戻ったら俺はこんな奴らを相手にしなくてはいけないのか。 それはそれで、頭が痛い。 朝比奈さんの言うとおり、過去に戻れるなら、 高校に入りたての自分に出会って、関わらないように何時間でも説得するだろう。 「ごめんね。キョンくん」 声がしたと同時に目の前が歪みブラックアウト。 …もう…誰かかわってくれ。 199 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 19 09 12.05 ID PpLiQoWH0 ここからはカマドウマ展開で参ります 192 気づくと薄暗い部屋にいることに気づく。 古泉、長門、朝比奈さんも周りにいて、古泉は人差し指を立て口に当てている。 しゃべるな、ということだろうが、お前がやるな、気色悪い。 周りを見ると、朝起きた部屋と同じだと気づく。 ベッドを見ると、なんと俺が寝ていた。 え!?っと驚きの声を上げたかったが、長門の右手が素早く俺の口を押さえた。 次に長門は左手を前に出し、何事かしゃべり始めた。 早くて全く聞き取れない。途端に部屋が崩れ出した。 ここでも驚きの声を上げたかったが、口は長門の右手によってふさがれている。 そして、見渡す限り砂漠になった。 200 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 19 11 31.66 ID PpLiQoWH0 199 「もうしゃべってもいいですよ」 さわやかな表情で古泉が言う。 「キョンくん、大丈夫ですか?気持ち悪くないですか。」 朝比奈さんが心配そうな目をしている。 俺は、大丈夫ですよ、と答え周りを見る。 もう状況はさっぱりだ。ここはどこだ。 「位相がずれた異空間」 長門が答えるが、何のことかわからない。もっと分かるように説明してくれ。 「無理。あなたにはまだ理解できない。また、説明している時間もない…来た」 長門が指差した方向を見ると、そこには奇妙な物体…いや生き物か。 絵でしか見たことがないが、夢を食らう獏に近い。 「情報生命体の一種。人の持つ『データ』を食料としている」 『データ』というのが記憶のことか? 「そう」 夢じゃなく記憶を食べるのか。 じゃ、俺の記憶が食べられる前にやっつけてくれよ。 「それはできない」 なぜ? 「えっと、それは規定事項だからです」 長門ではなく、朝比奈さんが答えてくれた。 規定事項って。俺の記憶がなくなっちゃうんですよ。 「それは・・・記憶が食べられる前にやっつけてしまったら ここにいるキョンくんが存在しないことになってしまうので…」 さっきと同じくなんとなくは分かるが理解できん。 最初から『記憶を食べられる俺』がいないような未来にすればいいのではないか。 …そして気づいた。俺、今の状況を受け入れてるんだな。 202 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 19 23 42.97 ID PpLiQoWH0 200 「はい、食べられました」 と古泉がうれしそうに言う。 獏似の巨大生物…情報生命体だっけか、を見るとなんとなく満足した表情で心なしか腹が膨れている。 もういいだろ。 長門がうなずく。 どうやってやっつけるんだ。 「任せてください」 古泉が親指を立て、グッっとする。 もういい、さっさとやれ。 古泉の右手に光る赤い球。 何度も言うが、もう本当にわけわからん。 古泉はその球を下に落とし、サッカーボールの要領で蹴る。 ふんもっふ。 …掛け声がなんとも言えずださい。 そして球は…といえば外れてる。 その外れた球によりこちらに気づいた獏は突進してくる。 「はずしちゃいました」 手を頭に乗っけてすみません、と頭を下げる。 顔がにやけてるから心から謝っているのか分からん。 俺は逃げようとするが、背中をあわあわ言っている朝比奈さんに捕まれ動けない。 長門は全く動こうとしない。 206 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 19 42 16.47 ID PpLiQoWH0 202 先ほどと同じ方法、同じ掛け声で 情報生命体を狙ってボールを放つ。今度は命中。、 みるみるうちにガラスが割れたように散っていく。 「終わり」 長門がつぶやく。 「あとは元の時間軸に戻るだけですね。 っと、その前に部屋の再構成がまだでしたね」 周りの風景も先ほどの情報生命体と同じように崩れ始め、元の部屋に姿を戻していった。 「さて気づかれないうちに退散しますか。 では、朝比奈さん、よろしくお願いします」 と古泉が手の甲で口を隠しながら小声で言う。 「はい。…また失礼します」 立ちくらみかと思ったが、違った。 来たときと同じように俺は意識を失う。 …朝比奈さん、俺を何のために連れてきたのですか。 209 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 19 53 01.83 ID PpLiQoWH0 206 本日三度目の目覚め。 長門の家で寝ていたらしい。 3人はすでに起きていて、 というより痛い思いをしているのは俺だけかもしれないが、 お茶をすすっている。 おい、記憶戻ってないぞ。 「やっと目が覚めましたか」 古泉がこちらを向く。 記憶がまだ戻ってない。俺はもう一度言う。 「長門さんによると食べられた記憶が戻るには一日必要なようです。 明日の朝には戻っているでしょう」 長門を見る。 長門はこちらに視線を向け、数ミリ単位で頭を動かした。 頷いた、ととっていいのだろうか。 「キョンくんばっかりごめんね」 朝比奈さんは、今日何度俺に謝っただろう。 そこで気がついたことがある。 ちょっと待て。情報生命体なんたらをやっつけて一日後に記憶が戻るんだったな。 「そうですよ」 今、やっつけてきたのは昨日の夜だったんじゃなかったのか。 ということは今日の朝記憶が戻ってもいいんじゃないか。 「違う。一日後というのはおよそ24時間後という意味。 また、朝比奈みくるが言った昨日の夜というのは 正確には今日の午前2時。つまり、記憶が戻るのは明日の午前2時ということ」 なるほどね。今情報生命体をやっつけてきたのは『昨日の俺』を助けるためか。 「そういうこと」 210 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 19 59 52.31 ID PpLiQoWH0 209 3人の『物語』を少しは信じてもいい気がしてきた。 いや、少しどころではない。 今日のことは夢だった、で済ましてもいいが、 今は記憶が戻ってくれるならその『物語』を信じてもいい。 ベッドにもぐりながらそんなことを考えていた。 結果は明日の朝になれば分かる。 記憶が戻る瞬間ってどんな感じなのだろう、 と思い睡魔と闘っていたが、無理な話だった。 当たり前だよな。 記憶喪失。 おかしな『物語』。 巨大生物との対面。 一日どころか一生のエネルギーを使ったといってもいいだろう。 つまりは、寝てしまったということだ。 215 名前:五番煎じ[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 12 12.92 ID PpLiQoWH0 210 昨日と同じように朝、目が覚める。 朝飯を食べ、学校へ向かう。 今日は家の前にタクシーが都合よく止まるなんてことはなかった。 急な坂道を登り、下駄箱前で谷口と挨拶をかわす。 教室に入ると、昨日と同じ格好、同じ場所に涼宮が座っている。 自分の席に座り、声をかける。 ポニーテール似合ってるぞ。 ハルヒは窓の外から俺に視線を移す。 両手を上にあげ、振り下ろす。机が大きな音を立て揺れた。 「何で昨日は言わなかったのよ!」 その後はいつものように怒られた。 記憶喪失かと思ったじゃない、とも言われた。 昨日あんなに疎ましいと思った怒鳴り声も怒った顔も 今日はなんだかうれしいぜ。 昨日いえなかった分もう一度言おう。 似合ってるぞ。 …ハルヒ、ただいま。 終わりです 長々と駄文失礼しました
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人物画像 基本情報 性格・容姿愛称 各組織の見方 その他ジョン・スミス 戦士キョン キョン(スーパーSOS大戦) 偽キョン 脚注 関連人物 人物画像 基本情報 声優は杉田智和。 本作の主人公。県立北高校1年5組(第9巻『分裂』から2年5組)の男子生徒であり、SOS団団員その1。 全作品を通しての語り手でありツッコミ役も兼ねる、ハルヒ絡みの厄介ごとを背負い込む苦労人。 家族構成は両親と妹。 古今東西の故事や歴史、宗教から映画、文学、様々な人物の言動や科学分野の専門用語などをたびたび引用・暗喩・婉曲表現する衒学家ではあるが、 SOS団内で学業の成績は一番(唯一)悪く、定期試験の結果は赤点ギリギリである。 過去に女性と付き合った経験はない(と自覚している)。 硬派というわけではなく、みくるに対しては「付き合いたい」ともらしたこともあり、みくるにデートに誘われた際には大喜びしていた【1】。 幼少時代にドブに落ちて3針縫ったという過去があり、傷跡も残っているらしい【2】。 また、季節で一番好きな季節は夏のようで、冬は大の苦手であるとのこと。自称「夏の暑さとセミの喧噪をこよなく愛する男」【3】。 当初はSOS団の中でも一般人として傍観者の立場を決め込んでいたが、 第4巻『消失』の事件で世界が超常現象とは無縁の平凡な日常に変わってしまったことで、自分がSOS団として活動する非日常な世界を 楽しんでいたことに気づき、そのことを受け入れた。 上記第4巻『消失』の一件以来、事件が起きるたびに長門に任せてばかりだった姿勢を反省した他、鶴屋さんやハルヒに指摘されるほど、長門を目で追うなど気に掛ける様子が増えた。 佐々木とは中学3年次に初めて同じクラスになり、1年間という短い期間であったが友人関係にある。第9巻『分裂』にて再会した。 第10巻『驚愕(前)』では、学校帰りにハルヒらと別れた後はうら寂しい気持ちになったり、SOS団の面々と一緒にいるのが知らないうちにオーソドックスモードに なっているなど、非日常な世界を楽しんでいることを第4巻『消失』時よりさらに強く意識するようになる。 ハルヒの行動に対しても、当初はあくまでストッパーとしてのスタンスであり、悪態を吐く事が多かったが、『分裂』以降は彼女の在り方をほぼ全面的に肯定しており、それ以上の個人的感情を抱いている事も匂わせているが、明言を避けている。(当人曰く、認めた瞬間にその後の人生が決まってしまうらしい) 性格・容姿 一人称は「俺」。身長170cm。 性格は事なかれ主義で「やれやれ」が口癖。制服のシャツを出した服装が特徴的。 ゲーム『並列』では、スーツを着用する場面があるが、ハルヒ曰く「スーツは似合わない」。 理屈っぽくよく愚痴をこぼすが人付き合いは良くお人好しで、慎ましく生きようとする常識人。 良くも悪くも平凡であり、本質的には温厚ではある【5】が限度を超えた自己中心な行動をするハルヒに堪忍袋の緒を切らしたり、長門を処分しようとした情報統合思念体に 啖呵を切る熱い一面や、時に優れた洞察力や行動力を発揮する。また、危機的状況に陥っても冷静でいられる一面もある。 愛称 愛称は「キョン」だが、これはあだ名で、彼の叔母が彼の本名をもじって呼び、それを彼の妹が広めたものである。本名は作中で一度も呼ばれたことがないため不明。 なお、本人はあだ名で呼ばれることを快く思ってはいない。 各組織の見方 「機関」の調査によれば、間違いなくどこにでもいる普通の人間とのことだが、ハルヒに選ばれた人間としてまたハルヒを動かす切り札として、 涼宮ハルヒを取り巻く各組織からは「鍵」として重要視されている。 事実、SOS団内でもハルヒに対して面と向かって叱責できる人間はキョンだけで、他のメンバーはそのような行動を取らない。 その他 ジョン・スミス 第3巻『退屈』収録の「笹の葉ラプソディ」および以降の巻において、3年前の七夕の夜に時間遡行したキョンが、 当時中学1年生のハルヒに対して名乗った偽名。この時のハルヒとジョン・スミスの出会いがSOS団結成の遠因となっている。 ハルヒは「ジョン・スミス=キョン」という事実に気づいていないが、初めてキョンと会話が成立した際に、以前会ったことを疑うような発言をしている。 第4巻『消失』において、キョンは改変された世界のハルヒに対してこの名前を使用し、世界を修復するチャンスを得た。 以後この名前は、ハルヒの力を目覚めさせる切り札として封印している。 戦士キョン ゲーム『戸惑』にて作成したゲーム「SOS団 QUEST 勇者と導かれし従者」の主人公。全身を鎧で覆い、剣を武器とする。 最初から登場しているのだが、実際に絵として登場するのはゲームの最後。 魔王を倒した後は超勇者ハルヒによって従者にされ「従者キョン」と呼ばれるようになるが、本人は従者で呼ばれるのを快く思っていない。 キョン(スーパーSOS大戦) ゲーム『戸惑』にて作成したゲームの一つ「スーパーSOS大戦 -地球が情報操作される日-」にて登場する。 朝倉の手によって異空間へと閉じ込められるが、後に助けに来たSOS団のメンバーとともに朝倉を倒す。 偽キョン ゲーム『直列』のEpisode5「誰も寝てはならない」にて、昇降口にある鏡から登場。 性格はオリジナルとは正反対であり、自我を持たない。また、鏡から登場したため制服のポケットの位置も反対になっており、目つきも怖くなっている。 脚注 第6巻『動揺』収録の「朝比奈みくるの憂鬱」。 第1巻『憂鬱』166頁より。 第5巻『暴走』収録の「雪山症候群」268~269頁より。ちなみに、作者の谷川も好きな季節は夏である。 第10巻『驚愕』(β-7)より。 関連人物 涼宮ハルヒ 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 朝倉涼子 鶴屋さん 谷口 国木田 キョンの妹 阪中 佐々木 橘京子 藤原 周防九曜
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声 - 杉田智和 涼宮ハルヒシリーズの主人公。県立北高校1年5組(第9巻『分裂』から2年5組)の男子生徒であり、SOS団団員その1。身長170cm。全作品を通しての語り手でありツッコミ役も兼ねる。涼宮ハルヒ絡みの厄介ごとを背負い込む苦労人で、「やれやれ」としばしば口にする。あまり自己主張こそしないが、時に優れた洞察力や行動力を発揮する。危機的状況に陥っても冷静な面がある。古今東西の故事や偉人の言動をたびたび引用する衒学家でもあるが、学業の成績はSOS団内で一番悪い。 本名は作中で一度も呼ばれたことがないため不明[1]で、「キョン」と言うあだ名の由来は祖母が名付け、それを彼の妹が広めたもの。佐々木(後述)によれば「読み方から『キョン』というあだ名は連想できないが、文字は連想でき、どことなく高貴で壮大なイメージを思わせる」もの。家族構成は両親と妹[2]。 キョンが物語の視点となっているため、発生する事件のほぼ全てに立ち会っている。基本的にはキョンの目線で物語が描かれているが、アニメオリジナルストーリーの「サムデイ イン ザ レイン」(谷川流氏本人が脚本を担当)では例外として、キョンが出掛けている間、ハルヒや他の団員らがどんな風に過ごしているか、キョンの視点では見られないシーンが描かれている。 性格は事なかれ主義。理屈っぽくよく愚痴をこぼすが、文句を言いつつも人付き合いはよく、お人好し。しかし、限度を超えた自己中心歩きをするハルヒに堪忍袋の緒を切らしたり、長門を処分しようとした情報統合思念体に啖呵を切ったり、熱い一面も持っている。 女心には鈍感。しかし硬派というわけではない。 「機関」の調査によれば間違いなく普通の一般人とのことだが、ハルヒに選ばれた人間として、またハルヒを動かす切り札として涼宮ハルヒを取り巻く各組織からは、鍵として重要視されている。事実、SOS団内でもハルヒに対して意見をする人間はキョンだけである(他のメンバーはほとんど意見しようとしない)。 当初はSOS団の中でも一般人として傍観者の立場を決め込んでいたが、第4巻『消失』の事件で世界が超常現象とは無縁の平凡な日常に変わってしまったことで、SOS団として活動する非日常な世界を楽しんでいたことに気づき、そのことを受け入れた。
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22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 04 45 50.25 ID XxwQ4sqPO 続くかぎり保守だ ゆっくりと意識が覚醒していくのが分かる。遠く、いや近くか?とにかく何やら声が聞こえる。 やたらと叫んでいるようだが、その相手はもしや俺か? 今やそのくらい近くから聞こえる声に顔をしかめながらうっすらと目を開ける。 「キョン!!」 俺を覗き込んでいるのは同い年くらいの女子だった。肩で切ったボブと黄色いカチューシャのリボンが目の前で揺れる。ちょ、誰だかしらんが顔が近くないか?そうそう思う俺をよそに、相手はこっちを心底心配そうに見てくる。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 04 59 42.97 ID XxwQ4sqPO 「ちょっと返事しなさいよ!キョン、あんた大丈夫なの!?」 見知らぬ女子からほぼ馬乗りで、しかも至近距離で叫ばれる俺の身にもなってくれ。 「だ、大丈夫だ」 答えなければ離さないといった様子で叫ぶ相手に、俺はひとまずそう返事をした。実際のところ体のあちこちがやけに痛むし、とりわけ頭がズキズキと痛むのだが、そう言えない気迫が目の前の相手にはあった。 「よかった……!」 それまで危機迫る表情だった相手はそう言って相好を崩した。花が綻ぶようなその笑顔に俺は思わず目を見張る。 「あ、……っもう、心配させないでよ!ほら、立ちなさいよ。足は?痛くない?」 相手は恥ずかしそうに顔を反らすと、そう悪態をつくように言って先に立ち上がった。 「ああ……大丈夫だ。心配かけてすまん。……で、だな……」 俺は辺りを見回した。 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 05 13 59.45 ID XxwQ4sqPO どうやら階段の踊り場らしい。相手と自分の恰好からして学校であることは間違いないな。ただ残念なことに、それがどこなのかが分からない。見覚えのない学校の階段、その踊り場に、俺は見知らぬ女子生徒と立っていた。 「ここはどこだ?いや、学校ってのは分かるんだがな、どうも見覚えがないんだ」 目の前の女子生徒はあからさまに「はあ?あんた何言ってんのよ」という顔をした。まったくもって不思議なことだが、なぜか相手の言いそうな台詞まできちんと浮かんで来た。自分でも何を言ってるんだと思うだけに、我がことながら相手には同情を禁じえないが、事実は事実だ。 「ついでに言うと、あんた誰だ?」 目の前の女子生徒は、いよいよもって信じられないこの世ならざるものを見るような目で俺を見て来た。何だ何だ。俺は幽霊か。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 05 23 10.77 ID XxwQ4sqPO これ読んでる人いる? 「キョン……、ちょっと、冗談はやめなさいよ。つまんないわよ」 相手は一気に凍り付いた表情で、それでも何とか俺を笑い飛ばそうと顔を引き攣らせた。俺も冗談ならよかったんだがな。 「……ウソ、でしょ?」 相手の声が細かく震えたのが分かった。大きな瞳を見開いてこっちをじぃっと見つめてくる。 「あんた、あたしのこと忘れちゃったの?……SOS団のことも?みくるちゃんや、有希や、古泉くんのことも!?」 悲壮感の漂う声で言い募られる。その人名のどれにも心当たりはないな。そう言うと同時に、目の前の女子生徒に驚愕と失意の表情が浮かぶのが分かった。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 05 36 07.83 ID XxwQ4sqPO 「記憶喪失……?ウソでしょそんな……そんな訳」 うろたえたように相手は呟き、俯いたかと思うと今度はいきなり顔を上げた。 「いけないわ、いますぐ病院に行くわよ!キョンは頭を打ったの。階段から落ちて……ドジなんだから」 言うや否や俺の手を取って駆け出そうとする相手を俺は慌てて制した。 「待て!ちょっと待て。まずその前に、……あれだ。確認させてくれ」 「……何よ」 「まず名前を教えてくれ」 「あんたはキョンよ。あたしは涼宮ハルヒ。あんたとあたしは同じクラスで……で、あんたはあたしが結成したSOS団の団員」 ……何やら妙なことになっているようだぞ。何だ、SOS団って。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 05 48 09.93 ID XxwQ4sqPO いないかー(´・ω・`) 「世界をおもしろくするための涼宮ハルヒの団よ!いいでしょ。当然あたしが団長なの」 スケールが大きすぎてどこからつっこんでいいものやら分からんようなことを、さも当然のように涼宮ハルヒは言い切った。 「団員はあんたを始め、5人よ!ああそうだわ。皆にも話さなくちゃいけないわね」 皆って誰だよ。 「キョン、あんたほんとに大丈夫?大丈夫なら今から皆のとこに連れてくけど」 大丈夫だ。とりあえず説明を先にしてくれ。 「……そうね。自分のことが分かんないって不便だし、不安よね。分かったわ、ついてきて」 涼宮ハルヒはそう言うと軽やかな足取りで階段を昇り、困惑しきりの俺を先導し始めたのだった。 229 名前:三番手[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 35 21.58 ID XxwQ4sqPO 27 さて。そうこうして俺は階段を昇り、やや古めかしいとも言えるドアの前へと連れていかれた。 「いきなりじゃみんな驚くわ。あんたはここにいなさい。呼んだら来るのよ、いいわね!」 どうでもいいが何でこうも高圧的な物言いなんだ。 呼んだら来いって、俺は犬か何かか。 俺の答えなんぞは待ってられないとばかりにドアの向こうへと消えた涼宮ハルヒに、俺は溜息をつくことしかできなかった。 まったく、どうしたもんかね。 そもそも記憶をなくす前の俺はどんな人間だったんだ。 あの高圧的な物言いに何も思っちゃいなかったんだろうか? そもそも何で得体の知れないSOS団なんかに入っているんだ。 俺はそれに納得していたんだろうか。 考えれば疑問は尽きない。 ともあれ平穏な学生生活は送っちゃいなかったんだろうな。 記憶喪失なんて、まるで漫画か小説の世界の現象に見舞われる時点で想像もたやすい。 己の置かれた現状に俺は二度目の溜息をついた。 230 名前:三番手[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 36 44.78 ID XxwQ4sqPO 229 「キョン!来なさい!」 壁にもたれて窓の外を眺めながらそんなことを考えているうち、部屋の中からお呼びがかかった。 ドアのノブを握る。 不思議なことに手に馴染んだそれを開くと、こちらを見遣る4対の目と目があった。 男一人を除くとみんな女子だ。 記憶をなくす前の俺は本当に何をしていたんだ? しかも恐ろしくレベルが高い。 まさにハーレムかくやといった様相に、俺は思わず言葉を失った。 「キョン、紹介するわ。みくるちゃんよ。えーっとあんたは朝比奈さんって呼んでたわね」 「朝比奈みくるです。えっと、えっと……大丈夫……ですか?」 何とも愛らしい声でそう言ったのは朝比奈みくるさんというらしかった。 気遣うような瞳で俺を見てくるのが少し気恥ずかしい。 「大丈夫です。朝比奈さん」 とにかく安心してもらいたくて頷くと、朝比奈さんはほっとしたように表情を和らげた。 231 名前:三番手[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 37 40.61 ID XxwQ4sqPO 230 「次!有希!あんたは長門って呼んでたわ」 「長門有希」 これは……、何と言うべきかな。 涼宮ハルヒとも朝比奈さんとも違うタイプなのには間違いない。 無表情にも見えるガラスのような双眸が俺を見上げてくるのだが、……おかしなことにその一見無感動そうな瞳には確かに不安げな色が見えた。 心配、されているんだろうか。 「長門……さん、も。心配かけたみたいだな。すまん」 「呼び捨てで構わない」 「ああ……」 頷く。 独特のテンポに少し戸惑うな。 ……それにしても朝比奈さんや長門、この二人もあの例の「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」とやらに納得して入団しているんだろうか? 非常に不可解だ。 233 名前:三番手[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 38 47.37 ID XxwQ4sqPO 231 「最後!古泉くんよ。この団の名誉ある副団長でもあるわ!あんたは古泉って呼んでたわね」 「古泉一樹です。いやぁ、不思議なものですね。見た目も言動も、まったく以前のあなたのままですよ」 そう言って微笑むハンサムマンはやけに慇懃な口調でそう言った。 記憶を失った俺に対してというよりは、ただの性分なのだと思うようにすべらかな口調だ。 「そうなのか?」 「ええ、そうして答える様もまったく以前のままです。涼宮さんが戸惑われたのも納得ですね」 頷きながら古泉とやらはちらりと涼宮ハルヒの方を見た。 その視線を受けて涼宮ハルヒが口を開く。 「キョン。さっきも言った通りあんたは階段から落ちたのよ。足を踏み外して。とりあえず大丈夫そうだけど、病院に行った方がいいと思うわ。頭ってのは見てみないと分かんないものよ」 だから今日は解散!と涼宮ハルヒは話を締め括った。 「ちょっと待て、悪いが俺は病院の場所も自宅の場所もわからんのだが」 「あ……と、そうね。分かったわ。じゃあみんなで行きましょう。いいわね?」 涼宮ハルヒはそう言って団員の顔を見回した。 面々は皆一様に頷いている。 異論はないようだ。 「じゃ、行くわよ!キョン!」 そう言って、涼宮ハルヒは我先にと荷物を担ぐと部屋を飛び出したのだった。 269 名前:三[] 投稿日:2008/04/10(木) 23 37 53.82 ID XxwQ4sqPO とりあえず投下する もとより保守代わりだ 233 その日の夜になった。 つつがなく検査を終え無事帰宅の許可が出た俺は、見慣れない自室というものを満喫していた。 いや、つつがなくというのは違うのかも知れないな。 俺はベッドに寝転がったまま、制服の内ポケットに入っていた紙切れを眺めた。 「放課後中庭の木の下にて待つ」 そう書かれた紙は、自分の名前が署名されている。 反対に、この手紙とも言えない紙切れを出されるはずだった相手の名前はどこにも書かれていなかった。 この紙切れを、俺は誰に出すつもりだったんだろう。 紙面に並ぶ文字を見つめると、なぜか心の底がざわざわするような居心地の悪さが襲った。 本日何度目になるかも分からない溜息をつく。 そのときだった。 270 名前:三[] 投稿日:2008/04/10(木) 23 40 07.32 ID XxwQ4sqPO 269 枕元に置いていた携帯電話が突如として鳴り出した。 驚いて体を起こし携帯を開く。 朝比奈さんからだ。 「はい」 「あっ、キョンくんですか?」 それ以外だったらどうするつもりなんだろうと思いながら、はいと返事をする。 「えっと、今から外に出れますか?……その、お話したいことがあるんです」 耳元のくすぐったい声に、いきなり心拍数が上がるのが分かる。 何とか平静を保ちながら、大丈夫ですよと答えると、朝比奈さんはほっとしたように声を上げた。 「よかったぁ……じゃあ、外で待ってますね」 「え?」 そう言いながら窓に近寄り、かかっていたカーテンを開く。 すると何と言うことだろう。 携帯を片耳に当てている朝比奈さんが部屋の真下に面した通りにひっそりと立っていた。 こちらに気付いたらしく、俺の方に小さく手を振っている。 「すぐ行きます!」 そう言って携帯を切ると、部屋を飛び出し階段を駆け降りた。 271 名前:三[] 投稿日:2008/04/10(木) 23 41 51.41 ID XxwQ4sqPO 270 「やあ、お疲れ様です」 玄関を開けたところにいたのは、にこやかに笑みを浮かべる古泉一樹だった。 「こ、古泉……」 いたのか、という言葉を飲み込んで一歩後ずさる。 「長門さんもいますよ」 古泉の後ろから顔を覗かせ小さく、本当にほんの僅か頭を前に傾けて長門が挨拶をした。 「朝比奈さんから聞かれたと思いますが、お話したいことがあります」 「……そうか」 そう言うしかないだろう。 俺は何か一種異様な空気を感じながらも頷いた。 上がるか?と言うと古泉は頭を左右に振って外を示し踵を返す。 無言のままその後をついていく長門を目で追ったあと、俺もまたその後に続いた。 「キョンくん!」 門扉を開けるとちょうど俺の部屋が見える位置で朝比奈さんが立っているのが見える。 「揃ってどうしたんだ?まさか今からSOS団とやらの会合か?」 そう古泉に質問を投げると、古泉は肩をすくめて俺を見た。 「あるいはイエスと言えるでしょう」 どういう意味だ。 「とりあえず、場所を移しましょう」 そう言って古泉が向かったのは近くの公園だった。 275 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 00 09 34.29 ID aHQC7JUzO 271 「単刀直入に言いますよ。僕は超能力者です。制限つきのものですが」 「えっと……信じてもらえないかもしれないけど、あたしは未来から来ました」 「情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース」 …………。 「もう一回分かりやすく言ってもらってもいいか」 そう言うと古泉は慇懃に頷いた。 「超能力者です」 「みっ、未来人です」 「情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース」 ………………。 ふざけてるのか、と聞くと皆一様に頭を横に振った。 何かの演劇の練習か、と言うとこれまた頭を横に振られた。 「我々は涼宮さんを中核とした異能力者です。皆それぞれにそれぞれの思惑を持ってここにいるんですよ」 「涼宮の……?」 「はい。彼女は通常ではありえない能力を無自覚に有している……それがどのくらいの規模かというと、この世界そのものを左右するに足るといいましょうか。そのくらいの情報を、彼女は発信しています」 俺は微笑んだまま言う古泉の顔をまじまじと見ることしかできなかった。 「記憶を失う前のあなたも、そんな表情をしました。同時に信じられないとも言いましたね」 当たり前だ。 こんなのを即座にほいほい信じるようなやついるのか。 「実に共感出来る見解ではありますが、残念ながら事実です」 古泉は肩を竦めた。 278 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 00 21 51.61 ID aHQC7JUzO 275 「それで」 俺は溜息をついた。 それで、と言ったもののうまく言葉が繋がらない。 そもそも何だ? 超能力者に未来人、宇宙人に世界を揺るがすような存在ときて、あげくに記憶喪失者ってどういった集団なんだよ。 そうでなくても奇妙奇天烈な集団なのにも関わらず、これじゃあどうしようもないじゃないか。 「何が目的だ。いや、待て、世界がどうとかいうそっちの目的はいい。今それを何で俺に話した?」 そう言うと、今度は古泉の代わりに長門が口を開いた。 「記憶を失う前のあなたは、ひどく不安定な状態にいた。それが今のあなたの記憶の混濁に強い影響を与えている」 「何かに悩んでいたということか」 「そう」 長門が小さく顎を引いて頷く。 「発生した問題の根源を解決することで混濁は解消する」 公園の白熱灯の光を受けて、俺を見つめる長門の瞳がきらりと輝いた。 282 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 00 34 23.02 ID aHQC7JUzO 278 「長門さんの言うことを鑑みますに、状況を正しくする意味でもあなたに告白をした方がいいと考えまして」 その告白のおかげで余計記憶が混濁しそうだよ。 俺は長門から目を反らし、公園の植え込みを見た。 「悩みって言ったってな……」 記憶もない俺にそんなことが分かるか? そう思ったとき、ふと脳裏をかすめたのはあの一枚の紙切れだった。 中庭に来いとだけ指示されたあの紙片。 今の手掛かりはそれだけと言ってもいい。 俺はそのことを三人に話した。 「手紙の内容に心当たりはあるか?」 そう聞くと三人の反応は三種三様だった。 古泉は訝るように眉を寄せ、朝比奈さんは愛らしく首を傾げて見せた。 長門はゆっくりと瞬くだけだ。 俺は三人を順に見ると、頭に手をやった。 お手上げだ。 292 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 00 58 29.09 ID aHQC7JUzO 282 いや、待て。 あとひとり、俺が呼び出しそうな相手がいるじゃないか。 俺は頭に浮かんだ相手の名前を呟いた。 「涼宮……なのか?」 呟きを拾ったのは長門だった。 「その可能性は非常に高い」 何でだ? 「中庭という場所が鍵」 どういう意味だ。 「それは答えることが出来ない。禁則事項」 禁則事項……ねぇ。 長門の言葉を聞いて、古泉は小さく笑った。 「何にせよその手紙が涼宮さん宛なのでしたら、僕たちもいよいよ安泰のようです」 これまた意味の分からないことを言って、僥倖とばかりに微笑んでいる。 「キョンくん、頑張ってください」 朝比奈さんまでもがきらきらと輝いた瞳で俺を激励してきた。 何だ何だ、事態がまったくさっぱり読めんのだが、いったいこれはどうなってるんだ? 296 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 01 20 51.61 ID aHQC7JUzO 295 心躍る…か 見ての通り冗長な話しか書けないが、友情については了解した 遅くなるがこの後に書かせてもらってもいいだろうか 292 俺だけが恐ろしく読めない状況のまま、なぜか納得した顔の三人は互いに頷きあい、それを合図に突発的なこの会合は散会となった。 家までの帰路を辿りながら俺は夜空を見上げてみる。 超能力者や未来人、宇宙人なんてものは置いておいて、とにかくあの手紙の受取人は誰なのか、それだけを考えた。 さっきは三人に心当たりがなさそうだったから涼宮の名前を出したが……、本当に俺は涼宮を呼び出すつもりだったんだろうか? ふと、夕方の出来事が蘇る。 階段から足を踏み外した俺のことを必死に呼び続けた涼宮の悲痛そうな表情と声が胸に還った。 そして俺が無事を告げたあとの、あの花が綻ぶような安堵の微笑みも。 みんな確かに俺のことを心配してくれた。だが、誰より心配してくれたのは涼宮なのかもしれない。 門扉の前で足を止め、俺はそんなことを考えていた。 302 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 01 42 59.82 ID aHQC7JUzO 確かにそう言われると原作古泉の扱いは不憫だw 298 おk 296 翌日の朝がきた。 学校に行くか病院へ行くか問われて、俺は迷わず学校を選んだ。 昨日病院では「脳に異常はない」という診断を受けている。 記憶障害については一時的なものだろうと言われていた。 そのうえで病院に行く必要はもうないだろう。 おざなりにネクタイを締めたあとに玄関で靴を履き、ドアを開ける。 と、そこには 「……涼宮?」 門扉に寄り掛かるようにして、こっちに背中を向けた涼宮ハルヒが立っていた。 「っ、キョン!迎えに来てあげたわよ。感謝しなさい」 ぱっとこっちを向いた涼宮は開口一番そんなことを言った。 まったくお前ってやつは朝っぱらからだって高圧的なんだな。 だがそこまでの不快感はない。 「いつから待ってたんだよ」 「えっ?そ、そんなには待ってないわよ。いつもあんたが学校に来る時間なんて分かってるから、それを逆算してきたし……」 涼宮はぶっきらぼうにそう言うと口を尖らせた。 306 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 01 59 17.08 ID aHQC7JUzO 303 乙。ありがとう 304 なるほどなー ニコやアニメのイメージが強すぎて、原作に忠実な古泉って案外難しいから参考になった 302 「あんたねぇ、ネクタイくらいちゃんと締めなさいよ!ほら、あたしがやったげるから」 「ちょ、涼宮!?」 言うや否や、涼宮は俺のネクタイを解いた。 細っこい指がちょこまかと動いてネクタイを綺麗に締め上げる。 「ほら。首、ンってして」 首を上げながら、俺は今更ながら周りの目というものを気にし始めた。 正直今のこの状況は、いまどき新婚夫婦でもやらんのではなかろうか。 横目で周囲に気を配ろうとするが、首を捻りすぎたらしい。 涼宮から「じっとしなさいよ。結びにくい」と怒りの声が飛んだ。 「よしっ、出来たわよ!じゃっ行きましょ」 満足げに笑んだ涼宮は、そんな風に言って頷くと鞄を再び手に持って歩き出した。 310 名前:三[sage] 投稿日:2008/04/11(金) 02 23 34.46 ID aHQC7JUzO 307 女体化シリーズは自分も苦手だな もともと男の古泉やキョンが好きなだけに余計見ていて違和感がある あれはあれで萌える人がいるのは理解してるから批判する気はないが 308 それはちょっと思うときがあるw 306 燦々と降り注ぐ朝の爽やかな日光を浴びながら、俺と涼宮は北高の坂を登っていた。 それにしても長ったらしい上にどこまでも続く坂だ。 こんな坂を毎日登り降りせにゃならんことを考えると、まったく出てくるのは溜息だけだな。 「キョン、あんた大丈夫?医者には急な運動は避けろって言われてんでしょ?無理はしちゃだめよ、あんた運ぶのあたしなんだから」 涼宮はさっきからこの調子だ。 心配しているのか命令しているのか分からない口調で俺にそう言ってくる。 ただ、その少し怒ったような表情を見ていると、真剣に俺を心配しているのかもしれないと思えた。 今も内ポケットに入れてあるあの紙切れ。 受け取る相手は、このだいぶ高圧的で心配性な、涼宮ハルヒなのだろうか。 俺は涼宮を見ながら、そうならいいとなんとなく思った。 315 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 03 12 26.84 ID aHQC7JUzO 310 昼休みになった。 とりあえず記憶喪失であるということはごく身近な友人にだけ伝えておくことにした。 それでも学校生活は問題なく進むだろうという涼宮の案だ。 不思議なもので学校で勉強したことなんかはちゃんと覚えている。 誰に教わったとかは忘れていても、教わった内容は覚えているから授業にも困らなかった。 谷口と国木田というクラスメイトと昼食を摂り、何とは無しに校舎内を歩くうち、どうやら中庭に出たらしかった。 一本のそこそこ大きな木が生えている。 その根元に、涼宮ハルヒが寝転んでいた。 317 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 03 42 10.81 ID aHQC7JUzO 315 「涼宮」 「……キョン」 涼宮は目を閉じていた。 さわさわと揺れる木陰の下でどうやら昼寝と洒落込んでいたらしい。 邪魔したか?と尋ねると、静かな声で「ううん」と返された。 隣に腰を降ろす。 「ねえ」 ざあ、と風が吹いて葉が音を立てる中、涼宮はまっすぐに空を見ながらそう言った。 「ハルヒって呼びなさいよ」 ぽつりと呟いた言葉は、いやに俺の胸を刺した。 何でだろうな? こいつの寂しさみたいなものが急に伝わって来たのかもしれない。 ああ、こいつはずっと、寂しかったんじゃないだろうか。 そう思うのは思い上がりだろうか。 「……ハルヒ」 名前を呼んだ。 初めて、ハルヒがこっちを見る。 「キョン。あんた何で忘れちゃったのよ。何で……忘れちゃえるのよ。一生かかったって忘れられない楽しいこと、たくさんやってきたのに」 ハルヒの瞳が惑うように揺れた。 「……今更涼宮なんて他人行儀に呼ぶなんて、……あたし、許さないわよ」 きっと俺を睨み上げる、その瞳から涙が一筋零れ落ちるのを、俺は見てしまった。 「ハルヒ」 もう一度、そう名前を呼ぶ。 321 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 04 18 44.37 ID aHQC7JUzO 317 そのときちょうど予鈴が鳴った。 ゆっくりとしたチャイムが鳴り終わっても、俺もハルヒもその場を離れようとはしなかった。 「……悪い」 「謝んないでよ。そんなんじゃないわ」 そんなんじゃないのよ、とハルヒが繰り返すのを聞きながら、俺はどうしたものかと考える。 俺の気持ちはもうハルヒへと向いていた。 この状況に抗うような理由はどこにもない。 「……ハルヒ」 何よ。 そう不機嫌そうに言うハルヒが、実は照れているというのは微かに赤く染まった頬を見れば何となく分かった。 きっと俺だって同じだな。 今から言おうとしている言葉を考えれば、いても立ってもいられないような気持ちになる。 ごまかしも何もかんも一切なしだ。 俺は制服の内ポケットに手をやり、そこにしまってあった紙切れを取り出した。 325 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 04 46 06.30 ID aHQC7JUzO 321 「やるよ」 <俺>からの気持ちだ。 そう言うと、ハルヒは怪訝そうな顔をした。 「何よ放課後って。今言いなさいよ」 むくりとハルヒが起き上がる。 「今言ったっていいんだがな。悪いがちょっと待ってくれ」 「…………何だか分からないけどまあいいわ。放課後、ここでいいのね?」 「ああ」 頷いて見せると、ハルヒは怪訝そうな顔のまま紙をすかしてもう一度眺めた。 それからその紙をポケットへとしまい込むと、何かを振り切るように猛然と立ち上がる。 「さっ、戻るわよ!キョン!」 「ああ。……そうだな、ハルヒ」 そう言うと、ハルヒは華やかな笑顔を俺に向けて浮かべて見せた。 100ワットの笑顔。 そんな言葉が、どうしようもない懐かしさと共に頭をよぎる。 この笑顔を、俺は知っている。 そしてその笑顔を、俺はきっと好きだったんだと思う。 前を駆けていくハルヒを見ながら、俺はそんなことを考えていた。 329 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 05 44 42.51 ID aHQC7JUzO 325 放課後。 「あたしちょっと部室に顔出してくる」 こっちを見ようとしないハルヒがそう言うのに頷いて、俺は中庭に降りた。 さて。どう言ったもんかね。 木の根元に座り込み、それからごろりと横になった。 目を閉じると気の早い吹奏楽部のパート練習の音が聞こえ始める。 それを聞きながら、俺は当然と言えば当然だがハルヒのことを考えていた。 それからあの紙切れのことも。 長門は「中庭にて待つ」という言葉に意味があると言った。 それが本当ならきっと、記憶を失う前の俺もハルヒを好きだったんだろう。 思い悩んでいたというのは告白についてで、手紙を書きはしたものの渡すタイミングを見出だせずにいたんじゃないかと思う。 331 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 06 15 16.47 ID aHQC7JUzO 329 「待たせたわね」 ふ、と影が濃くなるのが分かった。 ハルヒだ。 俺は目を開けて体を起こす。 反対にハルヒは俺の隣に腰を降ろした。 「じゃ、話を聞こうじゃない。午後の授業分あたしを待たせたんだし、とびっきりの話じゃないと承知しないんだから」 「とびっきりかどうかは分からんが、とりあえず大事な話だな」 「ふーん……。で、何よ」 ハルヒがこっちを見るのが分かった。 黄色いリボンが風に揺れる。 ハルヒの存在を感じながら、俺は覚悟を決めた。 ええいままよ、あとは野となれ山となれだ。 「好きだ」 そう言ってハルヒを見つめる。 ハルヒの方はというと、意味が通じているのかいないのかきょとんとした表情で俺を見つめ返していた。 それから訝るようにその瞳をすがめて見せる。 「…………誰が、誰をよ」 「俺がお前をだ」 「だめよ、ちゃんと言いなさい」 「ハルヒ、お前が好きだ」 そう言葉にするのと同時、ハルヒの瞳から涙が零れた。 334 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 06 46 46.94 ID aHQC7JUzO 331 「やだ、違う。何で……涙なんか」 ハルヒが慌てたようにしてその涙を拭う。 「ばか。ばか。……何でこんな状況のときにそんなこと言うのよ。……ばか」 拭っても拭ってもあとから零れる涙に戸惑うように、ハルヒは両手を使ってその涙拭いながら、それでも強がるようにそう言った。 「……俺じゃだめか」 記憶のない俺に言われてもどうしようもないことなのかもしれない。 ハルヒを覗き込むと、いやいやとするように緩く頭を左右に振られた。 「ばかね。……嫌なわけ、ないじゃない。記憶があろうがなかろうが、……キョンは、キョンよ。そんなの、あたし、とっくに知ってるんだから……ッ」 込み上げる鳴咽で途切れ途切れになりながらも、ハルヒは俺にそう言った。 そっと髪に触れて頭を撫でる。 涙を拭う手を止めたハルヒが、驚いたような表情で俺を見た。 339 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 07 08 18.44 ID aHQC7JUzO 334 ハルヒの頬に掛かる髪をそっと撫でてその耳にかける。 「……キョン」 小さなハルヒの声が、何かを促すように、あるいは何かを警告するように、俺の名前を呼んだ。 「すき。あたしもずっとすきだったの。……キョンのこと、ずっと」 また一つ、ハルヒの瞳から涙が落ちる。 それが頬を伝うのを見るより先に、俺はハルヒのその唇にキスをした。 340 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 07 14 34.34 ID aHQC7JUzO 339 ここからはその後日談になる。 結果として俺は以前の記憶を取り戻すことが出来た。 何ともお粗末な話だが、ハルヒとキスをした瞬間、例の閉鎖空間でのハルヒとの顛末を思い出し、それを引き金にするようにしてすべての記憶が蘇ったのだ。 長門的に言うなら、問題が解決したことにより俺の記憶の混濁も解消されたというわけだろう。 事実俺はハルヒとの関係や、それに付随するであろう諸問題について悩んでいたし、どうしようもない状態にあった。 そんなときに階段から転げ落ちたせいで、直面したくない問題から逃げていたらしい。 終わりよければすべてよしですよ、なんて古泉のやつは言っていたが、まあ俺もそれには概ね同意だったりする。 そういった風に、今回の記憶喪失の一件は落着を見た。 涼宮ハルヒは、今日も元気に俺の隣で笑っている。
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【キョン】 【作品名】涼宮ハルヒの憂鬱 【ジャンル】アニメ 【名前】キョン 【属性】SOS団団員 【大きさ】高校一年生男子 【攻撃力】金属バット所持 【防御力】ヘルメット装備 【素早さ】高校生並 【長所】SOS団団員 【短所】普通の人間 2スレ目 70 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2010/09/20(月) 21 56 48 ID WkBOlcez キョン ○>涼宮ハルヒ>鶴屋さん>>相模 正人 :体格勝ち ×>金田一 一:武器負け ×>赤坂美月:ナイフの攻撃力がやばすぎる 金田一 一>キョン>涼宮ハルヒ ヤス ○>泉こなた>山中さわ子>サイファー>平沢唯 :防御の関係で長期戦勝ち ×みくる:ビーム負け ×>相模 正人:金属バットは厳しいか みくる>ヤス>泉こなた>山中さわ子
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【作品名】もしも『涼宮ハルヒの憂鬱』が週刊少年ジャンプに掲載されていたら 【妄想属性】スパシンU1HACHIMAN系統の魔改造 【名前】キョン 【属性】異世界人 【大きさ】巨大な鹿角を生やした鎧を着た男子高校生並み(角頂高2m位) 【攻撃力】女子高生2人を小脇に抱えたまま爆走できる腕力 朝比奈さん(小柄な女子高生)が水平になる程の爆風が吹き荒れる中、 右腕で長門の手を掴み左腕で吹き飛びそうになる朝比奈さんの手を掴んで十数秒耐える 虚霊装術:精神エネルギーを使ってオーラを具現化させる力。 オーラを纏うことで物理攻撃を透過する霊魂などを直接攻撃できるようになるほか、攻撃力も上がる。 身長120mを超える神人が質量はそのままで人間大になった超神人の肉体をバターのようにぶち抜ける。 大気圏外から落下してくるハルヒ(女子高生並みの体重)を、地上で素手で受け止めた。 霊剣「虚雲」:虚霊装術で作り出した白い霞で出来た剣。 初期の時点ですら、朝倉の作り出した刃渡り5mの大剣と真正面からブチ当てて、 校庭の中心から校舎・体育館全ての窓を吹き飛ばすほどの衝撃波を発生させた。 一太刀で超神人を十数人まとめて切り裂くほどの切れ味を有する。 思い切り集中すればアサクラ02の刺突を突き破ることも可能。 相手の作り出した異次元空間を斬って風穴を開け、現実世界に帰還できる(普通の空間を斬れるわけではない)。 神戸港を埋め尽くすほど現れた1000もの神人(120mサイズ)を全て吹き飛ばし、 神戸港を突き破ってモーゼみたいに水平線の果てまで海をぶち抜いた 古泉の「火炎戴鳳」にもボロボロになりながらも耐えた周防がそのまま10倍サイズになった暴走周防の胴体を、全力突撃してぶち抜いた。 二刀流で繰り出すこともできる。 【防御力】校庭の中心から校舎・体育館全ての窓を吹き飛ばすほどの衝撃波に無傷で耐えられる 全長50mを超える巨大昆虫を一撃で爆砕する古泉の火炎球をぶち抜くほどの威力の魔弾が直撃して数十m吹き飛ばされてもよろめきながらも立ち上がる。 精神耐性持ちの長門が発狂しそうなほど悶え苦しむ瘴気に辛うじて耐えられる(精神耐性×2) 常人が一発で昏倒する催眠にも耐えられる。 長門の仕込んだナノマシンにより、時間改変が通用しなくなった。 虚霊装術による防御:オーラを守りに転換する能力。古泉曰く「普段のあなたなら即死する威力の攻撃でも無傷で跳ね返せます」。 全オーラを防御に回せば町一つ吹き飛ばすとされる自爆を無傷で守った長門の結界を貫通するアサクラ02の刺突を弾き飛ばせる。 古泉の火炎球にも無傷で耐えられる耐熱性を有し、空間ごと破壊されるか、防御限界を超えない限りは電撃や冷気、 重力などの防御無視攻撃も平気。 触れた物体を原子レベルまで瞬時に分解する朝倉のナイフで切られても分解されない。 【素早さ】5~6mから発射された光の速度で放たれるレーザーを目視してから手を突き出して防御できる長門と互角に切り結べる朝倉に 反応させずに十数m先から背後を取れるようになった長門(誓約解除)の斬撃に超至近距離から反応して腕を掴んで止められる喜緑と 互角に戦闘可能な初期のキョンと打ち合わせ無しに同時行動可能な朝比奈さん(換装形態)の反応相応の一瞬で数十m先まで飛ぶ圧縮重粒子弾が 眼前3mほどまで迫ってから一喝して消し飛ばせる藤原と互角に戦闘可能な古泉にとっての反応相応の一瞬で10mほど先まで飛ぶ火炎球が 至近距離まで迫ってからでも指パッチンで消し飛ばした佐々木と同等に戦闘可能な中盤のキョンとほぼ同等の戦闘・反応速度を有する 「赤い超神人」にも反応させずに6mほど先から一瞬で肉薄しすれ違いざまに首を落とすアサクラ02と互角に渡り合う長門(強化)に 反応させずに十数m先から一瞬で到達する復活朝倉の斬撃が朝比奈さんの眼前まで迫ってから動き出して 数十m先から飛び出し擦違いざまに抱きかかえて回避できるほどの速度で飛翔する天使化鶴屋さんより速い鶴屋さんの発射した弓矢数十本を 剣が届くほどの間合いから全部切り払って避ける橘の剣を素手で掴んで止める古泉の反応相応の一瞬で水平線の果て(4800m先)まで到達する 火炎戴鳳が眼前10~20mほどまで迫ってから驚愕しつつも手を突き出して防御できる反応の周防の繰り出す拳を至近距離から 素手で掴んで止められる終盤のキョンですら腕が10本に分身したように見えるほどの速度で斬撃を繰り出せる本気を出した藤原と 互角に渡り合う朝比奈さんメタルフルブラストモードの反応相応の一瞬で100mほど先まで到達するミクルビームハイパーが 眼前10mほどまで迫ってから咆哮の一撃で消し飛ばす暴走周防に反応させずに2~30m先から肉薄する終盤の古泉にも反応できない速度で 十数m先から飛んでくる全能神化暴走ハルヒの発生させた意思のエネルギーを3mほどの間合いから避ける最終形態長門にすら 反応させずに6mほど先から一瞬で肉薄する「造物主」の攻撃を至近距離から見切って回避可能な戦闘・反応速度。 この速度で動けるのは2~30m位の間合いまでとする。 移動速度はハルヒと朝比奈さんを小脇に抱えて家々の屋根を飛び跳ねて移動できるくらい。2~30m位余裕でジャンプ可能。 霊装飛行:身体を白いオーラの球で包んで飛翔する。速度は9行上に書いてある天使化した鶴屋さんの飛行速度と同等。要するに光よりだいぶ速い。 螺旋軌道やジグザグなど物理攻撃を無視した飛行が可能。 【特殊能力】不可視の霊体を目視できる、目にオーラを集中させることで霊体を視認できる相手でも見えない空間の裂け目などを視認可能。 町一つ分のあらゆる生物(霊や人造生命含む)を第六感で認識可能。真後ろからの攻撃なども殺気を感知して回避できる。 全能・世界改変を耐える体質を有する。 宇宙空間でも活動可能。 閉鎖空間展開:現実空間と時空の壁一枚隔てた異次元空間を展開する。意識を集中して手を合わせることで展開。 一瞬で自分含む半径数十m以内の物を閉鎖空間(広さは地球と同一)におくる。もう一回手を叩くと脱出できる。 【長所】インフレの極み 【短所】自分でも何書いてるんだかわからなくなってきた 【戦法】開始と同時に閉鎖空間展開し自分だけ脱出して追放勝ちを狙う 相手が脱出できる、もしくは巨大な場合には霊装飛行して接近しつつ、気配で探って虚雲で斬り裂く 【備考】異世界人であり、3年前のハルヒの「創造」により世界の壁を越え転移していた少年。 妹や谷口ら、そしてキョン自身の記憶は全てハルヒが無意識のうちに「元からいた」と作り替えた代物。 本人はその事実を知って愕然とするも、偽りであったとしても過ごしてきた日々に嘘はつけないと「機関」に協力して修業を積み、 異世界人としての力を徐々に取り戻し最終的にこんなバケモノのようなレベルの強さになった。 努力友情の果てに造物主に勝利し、最終回で全能の力を失い神の器の座から解放されたハルヒと結ばれる。 241 ◆rrvPPkQ0sA 2018/08/14(火) 22 35 59.25ID uFilmFvX 242 長門=朝倉 1mからの光速の1/6に反応速度 5~6mを6mとみなす 長門(誓約解除) 光速の13/6程度の移動速度 十数mを13mとみなす 喜緑=初期のキョン=朝比奈さん(換装形態) 1mからの光速の13/3の反応速度 超至近距離を50cmと見なす。同時行動可能って本当に同時なら0秒反応じゃ…… 圧縮重粒子弾 光速の39倍の移動速度 数十mを30mとみなす 藤原=古泉 1mからの光速の13倍に反応速度 火炎球 光速の130倍の移動速度 佐々木=中盤のキョン=赤い超神人 1mからの光速の130倍の反応速度 至近距離を1mとみなす アサクラ02=長門(強化) 光速の780倍の移動速度 ここで躓いた。長門(強化)の反応速度がわからん。 アサクラ02と長門(強化)の移動速度は光速の780倍でいいとして、反応速度は∞だろうが常人並だろうが同等なら互角に渡り合っているといっていいんじゃないか。 長門(誓約解除)と長門(強化)のどちらが強いかもわからんし、長門と長門(強化)で同等の反応速度と見なす。 復活朝倉 光速の13/6程度の移動速度 十数mを13mとみなす 天使化鶴屋さん 光速の65倍の移動速度 眼前を1m、数十mを30mと見なす 鶴屋さんの発射した弓矢 鶴屋さんが速くても弓矢が速いとは限らない。速度不明。 橘の剣 弓矢が間合いに入ってからモーションに入ったとは書いていないし、弓矢の範囲も不明。常人並と見なす。 古泉 上記より、1mからの光速の13倍に反応速度。 火炎戴鳳 光速の62400倍の移動速度 周防=終盤のキョン 1mから光速の3120倍の反応速度 10-20mを20mと見なす。周防の繰り出す拳も同等の速度。 本気を出した藤原 光速の31200倍の攻撃速度?残像に見えるの処理の仕方忘れた 朝比奈さんメタルフルブラストモード 反応速度不明。朝比奈さんと比べて速いかもよくわからない、常人並と見なす。1mから秒速2mに反応。 ミクルビームハイパー 秒速200mの移動速度 暴走周防 1mから秒速20mの反応速度 終盤の古泉 秒速400mの移動速度。反応速度は不明、常人並と見なす。1mから秒速2mに反応。 全能神化暴走ハルヒの発生させた意思のエネルギー 秒速26m。 最終形態長門 1mから秒速26/3mの反応速度。 「造物主」 秒速52mの移動速度。 つまり、常人の26倍の反応。1/52s=0.02秒で閉鎖空間発動。達人の6倍くらいか。 達人即時発動の壁上と見た。 243 ◆rrvPPkQ0sA 2018/08/16(木) 19 30 49.61ID KOr9Lpio キョン考察 ×へんかまん あーあ……反応がすごいことになってしまう。600mビル破壊で防御する前にやられる ×結標淡希 精神耐性があるので隙だらけにはならないが、物質転移でやられる ×ゼロゼロナンバーサイボーグ アルベルト・ハインリヒの自爆にやられる 〇黒塚 永時 黒の剣に切られる→異次元に追放→次元の壁を切られる→1分後キョン崩壊→その直後に次元の壁崩壊。 △組曲『ニコニコ動画』 バーサーカーソウルを食らうが攻撃にすべて耐える。 〇スナイパーライフルマン 反応で負けるものの……閉鎖空間勝ち 〇44マグナムマン 同上 △姉さんwith巨大要塞 閉鎖空間では姉さんは行動不能扱い?そうでなければ勝利条件を満たせない。 〇マルモと五月蝿い仲間たち 反応で異次元追放。戻ってくる方法はない ×クィンタマイザー 消滅され負け 〇真玉 初手の反応で勝てる ×傭兵 反応が遅い。負け。 〇ビル壊す人 ほぼ5m銃弾反応と互角の反応だが、攻防で勝てる 〇夢守 反応で勝てる ×ニトス=ジークフリード 閉鎖空間からシュマーリ・ゴールドで脱出される。 ×A-001「ソリティル」 初手は間に合うが、手をたたく直前に焼き切られるか(熱耐性そんなに大したことはなさそう) 〇超能力者A 追放勝ち ×遠藤倉之助 異次元から切られる。 〇ソウルオブサマサ 閉鎖空間は無効化されるが、霊剣「虚雲」は非物理 ×世界はネコのもの 確か任意全能は異次元からの攻撃もできたはず。猫には弱いか 〇AM-000クロイゼル 技名は余裕。追放勝ち。 〇ダン・ヴォール 閉鎖空間は無効。霊剣「虚雲」は水爆の10倍より強いかな。 〇天地ひつぎ 先手を取ればよかろう 〇劣化の騎士 先手を取ればよい ゼロゼロナンバーサイボーグ>キョン>黒塚 永時
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キョン【カードデータ作成済】 キョン レア (W) ニコニコクリーチャー—高校生・角川 キョンは全ての呪文や能力の対象にならず、効果を受けない。場にいないときも同様である。 2/2
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22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 04 45 50.25 ID XxwQ4sqPO ゆっくりと意識が覚醒していくのが分かる。遠く、いや近くか?とにかく何やら声が聞こえる。 やたらと叫んでいるようだが、その相手はもしや俺か? 今やそのくらい近くから聞こえる声に顔をしかめながらうっすらと目を開ける。 「キョン!!」 俺を覗き込んでいるのは同い年くらいの女子だった。肩で切ったボブと黄色いカチューシャのリボンが目の前で揺れる。ちょ、誰だかしらんが顔が近くないか?そうそう思う俺をよそに、相手はこっちを心底心配そうに見てくる。 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 04 59 42.97 ID XxwQ4sqPO 「ちょっと返事しなさいよ!キョン、あんた大丈夫なの!?」 見知らぬ女子からほぼ馬乗りで、しかも至近距離で叫ばれる俺の身にもなってくれ。 「だ、大丈夫だ」 答えなければ離さないといった様子で叫ぶ相手に、俺はひとまずそう返事をした。実際のところ体のあちこちがやけに痛むし、とりわけ頭がズキズキと痛むのだが、そう言えない気迫が目の前の相手にはあった。 「よかった……!」 それまで危機迫る表情だった相手はそう言って相好を崩した。花が綻ぶようなその笑顔に俺は思わず目を見張る。 「あ、……っもう、心配させないでよ!ほら、立ちなさいよ。足は?痛くない?」 相手は恥ずかしそうに顔を反らすと、そう悪態をつくように言って先に立ち上がった。 「ああ……大丈夫だ。心配かけてすまん。……で、だな……」 俺は辺りを見回した。 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 05 13 59.45 ID XxwQ4sqPO どうやら階段の踊り場らしい。相手と自分の恰好からして学校であることは間違いないな。ただ残念なことに、それがどこなのかが分からない。見覚えのない学校の階段、その踊り場に、俺は見知らぬ女子生徒と立っていた。 「ここはどこだ?いや、学校ってのは分かるんだがな、どうも見覚えがないんだ」 目の前の女子生徒はあからさまに「はあ?あんた何言ってんのよ」という顔をした。まったくもって不思議なことだが、なぜか相手の言いそうな台詞まできちんと浮かんで来た。自分でも何を言ってるんだと思うだけに、我がことながら相手には同情を禁じえないが、事実は事実だ。 「ついでに言うと、あんた誰だ?」 目の前の女子生徒は、いよいよもって信じられないこの世ならざるものを見るような目で俺を見て来た。何だ何だ。俺は幽霊か。 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 05 23 10.77 ID XxwQ4sqPO 「キョン……、ちょっと、冗談はやめなさいよ。つまんないわよ」 相手は一気に凍り付いた表情で、それでも何とか俺を笑い飛ばそうと顔を引き攣らせた。俺も冗談ならよかったんだがな。 「……ウソ、でしょ?」 相手の声が細かく震えたのが分かった。大きな瞳を見開いてこっちをじぃっと見つめてくる。 「あんた、あたしのこと忘れちゃったの?……SOS団のことも?みくるちゃんや、有希や、古泉くんのことも!?」 悲壮感の漂う声で言い募られる。その人名のどれにも心当たりはないな。そう言うと同時に、目の前の女子生徒に驚愕と失意の表情が浮かぶのが分かった。 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 05 36 07.83 ID XxwQ4sqPO 「記憶喪失……?ウソでしょそんな……そんな訳」 うろたえたように相手は呟き、俯いたかと思うと今度はいきなり顔を上げた。 「いけないわ、いますぐ病院に行くわよ!キョンは頭を打ったの。階段から落ちて……ドジなんだから」 言うや否や俺の手を取って駆け出そうとする相手を俺は慌てて制した。 「待て!ちょっと待て。まずその前に、……あれだ。確認させてくれ」 「……何よ」 「まず名前を教えてくれ」 「あんたはキョンよ。あたしは涼宮ハルヒ。あんたとあたしは同じクラスで……で、あんたはあたしが結成したSOS団の団員」 ……何やら妙なことになっているようだぞ。何だ、SOS団って。 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/10(木) 05 48 09.93 ID XxwQ4sqPO 「世界をおもしろくするための涼宮ハルヒの団よ!いいでしょ。当然あたしが団長なの」 スケールが大きすぎてどこからつっこんでいいものやら分からんようなことを、さも当然のように涼宮ハルヒは言い切った。 「団員はあんたを始め、5人よ!ああそうだわ。皆にも話さなくちゃいけないわね」 皆って誰だよ。 「キョン、あんたほんとに大丈夫?大丈夫なら今から皆のとこに連れてくけど」 大丈夫だ。とりあえず説明を先にしてくれ。 「……そうね。自分のことが分かんないって不便だし、不安よね。分かったわ、ついてきて」 涼宮ハルヒはそう言うと軽やかな足取りで階段を昇り、困惑しきりの俺を先導し始めたのだった。 229 名前:三番手[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 35 21.58 ID XxwQ4sqPO 27 さて。そうこうして俺は階段を昇り、やや古めかしいとも言えるドアの前へと連れていかれた。 「いきなりじゃみんな驚くわ。あんたはここにいなさい。呼んだら来るのよ、いいわね!」 どうでもいいが何でこうも高圧的な物言いなんだ。 呼んだら来いって、俺は犬か何かか。 俺の答えなんぞは待ってられないとばかりにドアの向こうへと消えた涼宮ハルヒに、俺は溜息をつくことしかできなかった。 まったく、どうしたもんかね。 そもそも記憶をなくす前の俺はどんな人間だったんだ。 あの高圧的な物言いに何も思っちゃいなかったんだろうか? そもそも何で得体の知れないSOS団なんかに入っているんだ。 俺はそれに納得していたんだろうか。 考えれば疑問は尽きない。 ともあれ平穏な学生生活は送っちゃいなかったんだろうな。 記憶喪失なんて、まるで漫画か小説の世界の現象に見舞われる時点で想像もたやすい。 己の置かれた現状に俺は二度目の溜息をついた。 230 名前:三番手[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 36 44.78 ID XxwQ4sqPO 229 「キョン!来なさい!」 壁にもたれて窓の外を眺めながらそんなことを考えているうち、部屋の中からお呼びがかかった。 ドアのノブを握る。 不思議なことに手に馴染んだそれを開くと、こちらを見遣る4対の目と目があった。 男一人を除くとみんな女子だ。 記憶をなくす前の俺は本当に何をしていたんだ? しかも恐ろしくレベルが高い。 まさにハーレムかくやといった様相に、俺は思わず言葉を失った。 「キョン、紹介するわ。みくるちゃんよ。えーっとあんたは朝比奈さんって呼んでたわね」 「朝比奈みくるです。えっと、えっと……大丈夫……ですか?」 何とも愛らしい声でそう言ったのは朝比奈みくるさんというらしかった。 気遣うような瞳で俺を見てくるのが少し気恥ずかしい。 「大丈夫です。朝比奈さん」 とにかく安心してもらいたくて頷くと、朝比奈さんはほっとしたように表情を和らげた。 231 名前:三番手[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 37 40.61 ID XxwQ4sqPO 230 「次!有希!あんたは長門って呼んでたわ」 「長門有希」 これは……、何と言うべきかな。 涼宮ハルヒとも朝比奈さんとも違うタイプなのには間違いない。 無表情にも見えるガラスのような双眸が俺を見上げてくるのだが、……おかしなことにその一見無感動そうな瞳には確かに不安げな色が見えた。 心配、されているんだろうか。 「長門……さん、も。心配かけたみたいだな。すまん」 「呼び捨てで構わない」 「ああ……」 頷く。 独特のテンポに少し戸惑うな。 ……それにしても朝比奈さんや長門、この二人もあの例の「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」とやらに納得して入団しているんだろうか? 非常に不可解だ。 233 名前:三番手[] 投稿日:2008/04/10(木) 20 38 47.37 ID XxwQ4sqPO 231 「最後!古泉くんよ。この団の名誉ある副団長でもあるわ!あんたは古泉って呼んでたわね」 「古泉一樹です。いやぁ、不思議なものですね。見た目も言動も、まったく以前のあなたのままですよ」 そう言って微笑むハンサムマンはやけに慇懃な口調でそう言った。 記憶を失った俺に対してというよりは、ただの性分なのだと思うようにすべらかな口調だ。 「そうなのか?」 「ええ、そうして答える様もまったく以前のままです。涼宮さんが戸惑われたのも納得ですね」 頷きながら古泉とやらはちらりと涼宮ハルヒの方を見た。 その視線を受けて涼宮ハルヒが口を開く。 「キョン。さっきも言った通りあんたは階段から落ちたのよ。足を踏み外して。とりあえず大丈夫そうだけど、病院に行った方がいいと思うわ。頭ってのは見てみないと分かんないものよ」 だから今日は解散!と涼宮ハルヒは話を締め括った。 「ちょっと待て、悪いが俺は病院の場所も自宅の場所もわからんのだが」 「あ……と、そうね。分かったわ。じゃあみんなで行きましょう。いいわね?」 涼宮ハルヒはそう言って団員の顔を見回した。 面々は皆一様に頷いている。 異論はないようだ。 「じゃ、行くわよ!キョン!」 そう言って、涼宮ハルヒは我先にと荷物を担ぐと部屋を飛び出したのだった。 269 名前:三[] 投稿日:2008/04/10(木) 23 37 53.82 ID XxwQ4sqPO 233 その日の夜になった。 つつがなく検査を終え無事帰宅の許可が出た俺は、見慣れない自室というものを満喫していた。 いや、つつがなくというのは違うのかも知れないな。 俺はベッドに寝転がったまま、制服の内ポケットに入っていた紙切れを眺めた。 「放課後中庭の木の下にて待つ」 そう書かれた紙は、自分の名前が署名されている。 反対に、この手紙とも言えない紙切れを出されるはずだった相手の名前はどこにも書かれていなかった。 この紙切れを、俺は誰に出すつもりだったんだろう。 紙面に並ぶ文字を見つめると、なぜか心の底がざわざわするような居心地の悪さが襲った。 本日何度目になるかも分からない溜息をつく。 そのときだった。 270 名前:三[] 投稿日:2008/04/10(木) 23 40 07.32 ID XxwQ4sqPO 269 枕元に置いていた携帯電話が突如として鳴り出した。 驚いて体を起こし携帯を開く。 朝比奈さんからだ。 「はい」 「あっ、キョンくんですか?」 それ以外だったらどうするつもりなんだろうと思いながら、はいと返事をする。 「えっと、今から外に出れますか?……その、お話したいことがあるんです」 耳元のくすぐったい声に、いきなり心拍数が上がるのが分かる。 何とか平静を保ちながら、大丈夫ですよと答えると、朝比奈さんはほっとしたように声を上げた。 「よかったぁ……じゃあ、外で待ってますね」 「え?」 そう言いながら窓に近寄り、かかっていたカーテンを開く。 すると何と言うことだろう。 携帯を片耳に当てている朝比奈さんが部屋の真下に面した通りにひっそりと立っていた。 こちらに気付いたらしく、俺の方に小さく手を振っている。 「すぐ行きます!」 そう言って携帯を切ると、部屋を飛び出し階段を駆け降りた。 271 名前:三[] 投稿日:2008/04/10(木) 23 41 51.41 ID XxwQ4sqPO 270 「やあ、お疲れ様です」 玄関を開けたところにいたのは、にこやかに笑みを浮かべる古泉一樹だった。 「こ、古泉……」 いたのか、という言葉を飲み込んで一歩後ずさる。 「長門さんもいますよ」 古泉の後ろから顔を覗かせ小さく、本当にほんの僅か頭を前に傾けて長門が挨拶をした。 「朝比奈さんから聞かれたと思いますが、お話したいことがあります」 「……そうか」 そう言うしかないだろう。 俺は何か一種異様な空気を感じながらも頷いた。 上がるか?と言うと古泉は頭を左右に振って外を示し踵を返す。 無言のままその後をついていく長門を目で追ったあと、俺もまたその後に続いた。 「キョンくん!」 門扉を開けるとちょうど俺の部屋が見える位置で朝比奈さんが立っているのが見える。 「揃ってどうしたんだ?まさか今からSOS団とやらの会合か?」 そう古泉に質問を投げると、古泉は肩をすくめて俺を見た。 「あるいはイエスと言えるでしょう」 どういう意味だ。 「とりあえず、場所を移しましょう」 そう言って古泉が向かったのは近くの公園だった。 275 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 00 09 34.29 ID aHQC7JUzO 271 「単刀直入に言いますよ。僕は超能力者です。制限つきのものですが」 「えっと……信じてもらえないかもしれないけど、あたしは未来から来ました」 「情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース」 …………。 「もう一回分かりやすく言ってもらってもいいか」 そう言うと古泉は慇懃に頷いた。 「超能力者です」 「みっ、未来人です」 「情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース」 ………………。 ふざけてるのか、と聞くと皆一様に頭を横に振った。 何かの演劇の練習か、と言うとこれまた頭を横に振られた。 「我々は涼宮さんを中核とした異能力者です。皆それぞれにそれぞれの思惑を持ってここにいるんですよ」 「涼宮の……?」 「はい。彼女は通常ではありえない能力を無自覚に有している……それがどのくらいの規模かというと、この世界そのものを左右するに足るといいましょうか。そのくらいの情報を、彼女は発信しています」 俺は微笑んだまま言う古泉の顔をまじまじと見ることしかできなかった。 「記憶を失う前のあなたも、そんな表情をしました。同時に信じられないとも言いましたね」 当たり前だ。 こんなのを即座にほいほい信じるようなやついるのか。 「実に共感出来る見解ではありますが、残念ながら事実です」 古泉は肩を竦めた。 278 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 00 21 51.61 ID aHQC7JUzO 275 「それで」 俺は溜息をついた。 それで、と言ったもののうまく言葉が繋がらない。 そもそも何だ? 超能力者に未来人、宇宙人に世界を揺るがすような存在ときて、あげくに記憶喪失者ってどういった集団なんだよ。 そうでなくても奇妙奇天烈な集団なのにも関わらず、これじゃあどうしようもないじゃないか。 「何が目的だ。いや、待て、世界がどうとかいうそっちの目的はいい。今それを何で俺に話した?」 そう言うと、今度は古泉の代わりに長門が口を開いた。 「記憶を失う前のあなたは、ひどく不安定な状態にいた。それが今のあなたの記憶の混濁に強い影響を与えている」 「何かに悩んでいたということか」 「そう」 長門が小さく顎を引いて頷く。 「発生した問題の根源を解決することで混濁は解消する」 公園の白熱灯の光を受けて、俺を見つめる長門の瞳がきらりと輝いた。 282 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 00 34 23.02 ID aHQC7JUzO 278 「長門さんの言うことを鑑みますに、状況を正しくする意味でもあなたに告白をした方がいいと考えまして」 その告白のおかげで余計記憶が混濁しそうだよ。 俺は長門から目を反らし、公園の植え込みを見た。 「悩みって言ったってな……」 記憶もない俺にそんなことが分かるか? そう思ったとき、ふと脳裏をかすめたのはあの一枚の紙切れだった。 中庭に来いとだけ指示されたあの紙片。 今の手掛かりはそれだけと言ってもいい。 俺はそのことを三人に話した。 「手紙の内容に心当たりはあるか?」 そう聞くと三人の反応は三種三様だった。 古泉は訝るように眉を寄せ、朝比奈さんは愛らしく首を傾げて見せた。 長門はゆっくりと瞬くだけだ。 俺は三人を順に見ると、頭に手をやった。 お手上げだ。 292 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 00 58 29.09 ID aHQC7JUzO 282 いや、待て。 あとひとり、俺が呼び出しそうな相手がいるじゃないか。 俺は頭に浮かんだ相手の名前を呟いた。 「涼宮……なのか?」 呟きを拾ったのは長門だった。 「その可能性は非常に高い」 何でだ? 「中庭という場所が鍵」 どういう意味だ。 「それは答えることが出来ない。禁則事項」 禁則事項……ねぇ。 長門の言葉を聞いて、古泉は小さく笑った。 「何にせよその手紙が涼宮さん宛なのでしたら、僕たちもいよいよ安泰のようです」 これまた意味の分からないことを言って、僥倖とばかりに微笑んでいる。 「キョンくん、頑張ってください」 朝比奈さんまでもがきらきらと輝いた瞳で俺を激励してきた。 何だ何だ、事態がまったくさっぱり読めんのだが、いったいこれはどうなってるんだ? 296 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 01 20 51.61 ID aHQC7JUzO 292 俺だけが恐ろしく読めない状況のまま、なぜか納得した顔の三人は互いに頷きあい、それを合図に突発的なこの会合は散会となった。 家までの帰路を辿りながら俺は夜空を見上げてみる。 超能力者や未来人、宇宙人なんてものは置いておいて、とにかくあの手紙の受取人は誰なのか、それだけを考えた。 さっきは三人に心当たりがなさそうだったから涼宮の名前を出したが……、本当に俺は涼宮を呼び出すつもりだったんだろうか? ふと、夕方の出来事が蘇る。 階段から足を踏み外した俺のことを必死に呼び続けた涼宮の悲痛そうな表情と声が胸に還った。 そして俺が無事を告げたあとの、あの花が綻ぶような安堵の微笑みも。 みんな確かに俺のことを心配してくれた。だが、誰より心配してくれたのは涼宮なのかもしれない。 門扉の前で足を止め、俺はそんなことを考えていた。 302 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 01 42 59.82 ID aHQC7JUzO 296 翌日の朝がきた。 学校に行くか病院へ行くか問われて、俺は迷わず学校を選んだ。 昨日病院では「脳に異常はない」という診断を受けている。 記憶障害については一時的なものだろうと言われていた。 そのうえで病院に行く必要はもうないだろう。 おざなりにネクタイを締めたあとに玄関で靴を履き、ドアを開ける。 と、そこには 「……涼宮?」 門扉に寄り掛かるようにして、こっちに背中を向けた涼宮ハルヒが立っていた。 「っ、キョン!迎えに来てあげたわよ。感謝しなさい」 ぱっとこっちを向いた涼宮は開口一番そんなことを言った。 まったくお前ってやつは朝っぱらからだって高圧的なんだな。 だがそこまでの不快感はない。 「いつから待ってたんだよ」 「えっ?そ、そんなには待ってないわよ。いつもあんたが学校に来る時間なんて分かってるから、それを逆算してきたし……」 涼宮はぶっきらぼうにそう言うと口を尖らせた。 306 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 01 59 17.08 ID aHQC7JUzO 302 「あんたねぇ、ネクタイくらいちゃんと締めなさいよ!ほら、あたしがやったげるから」 「ちょ、涼宮!?」 言うや否や、涼宮は俺のネクタイを解いた。 細っこい指がちょこまかと動いてネクタイを綺麗に締め上げる。 「ほら。首、ンってして」 首を上げながら、俺は今更ながら周りの目というものを気にし始めた。 正直今のこの状況は、いまどき新婚夫婦でもやらんのではなかろうか。 横目で周囲に気を配ろうとするが、首を捻りすぎたらしい。 涼宮から「じっとしなさいよ。結びにくい」と怒りの声が飛んだ。 「よしっ、出来たわよ!じゃっ行きましょ」 満足げに笑んだ涼宮は、そんな風に言って頷くと鞄を再び手に持って歩き出した。 310 名前:三[sage] 投稿日:2008/04/11(金) 02 23 34.46 ID aHQC7JUzO 306 燦々と降り注ぐ朝の爽やかな日光を浴びながら、俺と涼宮は北高の坂を登っていた。 それにしても長ったらしい上にどこまでも続く坂だ。 こんな坂を毎日登り降りせにゃならんことを考えると、まったく出てくるのは溜息だけだな。 「キョン、あんた大丈夫?医者には急な運動は避けろって言われてんでしょ?無理はしちゃだめよ、あんた運ぶのあたしなんだから」 涼宮はさっきからこの調子だ。 心配しているのか命令しているのか分からない口調で俺にそう言ってくる。 ただ、その少し怒ったような表情を見ていると、真剣に俺を心配しているのかもしれないと思えた。 今も内ポケットに入れてあるあの紙切れ。 受け取る相手は、このだいぶ高圧的で心配性な、涼宮ハルヒなのだろうか。 俺は涼宮を見ながら、そうならいいとなんとなく思った。 315 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 03 12 26.84 ID aHQC7JUzO 310 昼休みになった。 とりあえず記憶喪失であるということはごく身近な友人にだけ伝えておくことにした。 それでも学校生活は問題なく進むだろうという涼宮の案だ。 不思議なもので学校で勉強したことなんかはちゃんと覚えている。 誰に教わったとかは忘れていても、教わった内容は覚えているから授業にも困らなかった。 谷口と国木田というクラスメイトと昼食を摂り、何とは無しに校舎内を歩くうち、どうやら中庭に出たらしかった。 一本のそこそこ大きな木が生えている。 その根元に、涼宮ハルヒが寝転んでいた。 317 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 03 42 10.81 ID aHQC7JUzO 315 「涼宮」 「……キョン」 涼宮は目を閉じていた。 さわさわと揺れる木陰の下でどうやら昼寝と洒落込んでいたらしい。 邪魔したか?と尋ねると、静かな声で「ううん」と返された。 隣に腰を降ろす。 「ねえ」 ざあ、と風が吹いて葉が音を立てる中、涼宮はまっすぐに空を見ながらそう言った。 「ハルヒって呼びなさいよ」 ぽつりと呟いた言葉は、いやに俺の胸を刺した。 何でだろうな? こいつの寂しさみたいなものが急に伝わって来たのかもしれない。 ああ、こいつはずっと、寂しかったんじゃないだろうか。 そう思うのは思い上がりだろうか。 「……ハルヒ」 名前を呼んだ。 初めて、ハルヒがこっちを見る。 「キョン。あんた何で忘れちゃったのよ。何で……忘れちゃえるのよ。一生かかったって忘れられない楽しいこと、たくさんやってきたのに」 ハルヒの瞳が惑うように揺れた。 「……今更涼宮なんて他人行儀に呼ぶなんて、……あたし、許さないわよ」 きっと俺を睨み上げる、その瞳から涙が一筋零れ落ちるのを、俺は見てしまった。 「ハルヒ」 もう一度、そう名前を呼ぶ。 321 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 04 18 44.37 ID aHQC7JUzO 317 そのときちょうど予鈴が鳴った。 ゆっくりとしたチャイムが鳴り終わっても、俺もハルヒもその場を離れようとはしなかった。 「……悪い」 「謝んないでよ。そんなんじゃないわ」 そんなんじゃないのよ、とハルヒが繰り返すのを聞きながら、俺はどうしたものかと考える。 俺の気持ちはもうハルヒへと向いていた。 この状況に抗うような理由はどこにもない。 「……ハルヒ」 何よ。 そう不機嫌そうに言うハルヒが、実は照れているというのは微かに赤く染まった頬を見れば何となく分かった。 きっと俺だって同じだな。 今から言おうとしている言葉を考えれば、いても立ってもいられないような気持ちになる。 ごまかしも何もかんも一切なしだ。 俺は制服の内ポケットに手をやり、そこにしまってあった紙切れを取り出した。 325 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 04 46 06.30 ID aHQC7JUzO 321 「やるよ」 <俺>からの気持ちだ。 そう言うと、ハルヒは怪訝そうな顔をした。 「何よ放課後って。今言いなさいよ」 むくりとハルヒが起き上がる。 「今言ったっていいんだがな。悪いがちょっと待ってくれ」 「…………何だか分からないけどまあいいわ。放課後、ここでいいのね?」 「ああ」 頷いて見せると、ハルヒは怪訝そうな顔のまま紙をすかしてもう一度眺めた。 それからその紙をポケットへとしまい込むと、何かを振り切るように猛然と立ち上がる。 「さっ、戻るわよ!キョン!」 「ああ。……そうだな、ハルヒ」 そう言うと、ハルヒは華やかな笑顔を俺に向けて浮かべて見せた。 100ワットの笑顔。 そんな言葉が、どうしようもない懐かしさと共に頭をよぎる。 この笑顔を、俺は知っている。 そしてその笑顔を、俺はきっと好きだったんだと思う。 前を駆けていくハルヒを見ながら、俺はそんなことを考えていた。 329 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 05 44 42.51 ID aHQC7JUzO 325 放課後。 「あたしちょっと部室に顔出してくる」 こっちを見ようとしないハルヒがそう言うのに頷いて、俺は中庭に降りた。 さて。どう言ったもんかね。 木の根元に座り込み、それからごろりと横になった。 目を閉じると気の早い吹奏楽部のパート練習の音が聞こえ始める。 それを聞きながら、俺は当然と言えば当然だがハルヒのことを考えていた。 それからあの紙切れのことも。 長門は「中庭にて待つ」という言葉に意味があると言った。 それが本当ならきっと、記憶を失う前の俺もハルヒを好きだったんだろう。 思い悩んでいたというのは告白についてで、手紙を書きはしたものの渡すタイミングを見出だせずにいたんじゃないかと思う。 331 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 06 15 16.47 ID aHQC7JUzO 329 「待たせたわね」 ふ、と影が濃くなるのが分かった。 ハルヒだ。 俺は目を開けて体を起こす。 反対にハルヒは俺の隣に腰を降ろした。 「じゃ、話を聞こうじゃない。午後の授業分あたしを待たせたんだし、とびっきりの話じゃないと承知しないんだから」 「とびっきりかどうかは分からんが、とりあえず大事な話だな」 「ふーん……。で、何よ」 ハルヒがこっちを見るのが分かった。 黄色いリボンが風に揺れる。 ハルヒの存在を感じながら、俺は覚悟を決めた。 ええいままよ、あとは野となれ山となれだ。 「好きだ」 そう言ってハルヒを見つめる。 ハルヒの方はというと、意味が通じているのかいないのかきょとんとした表情で俺を見つめ返していた。 それから訝るようにその瞳をすがめて見せる。 「…………誰が、誰をよ」 「俺がお前をだ」 「だめよ、ちゃんと言いなさい」 「ハルヒ、お前が好きだ」 そう言葉にするのと同時、ハルヒの瞳から涙が零れた。 334 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 06 46 46.94 ID aHQC7JUzO 331 「やだ、違う。何で……涙なんか」 ハルヒが慌てたようにしてその涙を拭う。 「ばか。ばか。……何でこんな状況のときにそんなこと言うのよ。……ばか」 拭っても拭ってもあとから零れる涙に戸惑うように、ハルヒは両手を使ってその涙拭いながら、それでも強がるようにそう言った。 「……俺じゃだめか」 記憶のない俺に言われてもどうしようもないことなのかもしれない。 ハルヒを覗き込むと、いやいやとするように緩く頭を左右に振られた。 「ばかね。……嫌なわけ、ないじゃない。記憶があろうがなかろうが、……キョンは、キョンよ。そんなの、あたし、とっくに知ってるんだから……ッ」 込み上げる鳴咽で途切れ途切れになりながらも、ハルヒは俺にそう言った。 そっと髪に触れて頭を撫でる。 涙を拭う手を止めたハルヒが、驚いたような表情で俺を見た。 339 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 07 08 18.44 ID aHQC7JUzO 334 ハルヒの頬に掛かる髪をそっと撫でてその耳にかける。 「……キョン」 小さなハルヒの声が、何かを促すように、あるいは何かを警告するように、俺の名前を呼んだ。 「すき。あたしもずっとすきだったの。……キョンのこと、ずっと」 また一つ、ハルヒの瞳から涙が落ちる。 それが頬を伝うのを見るより先に、俺はハルヒのその唇にキスをした。 340 名前:三[] 投稿日:2008/04/11(金) 07 14 34.34 ID aHQC7JUzO 339 ここからはその後日談になる。 結果として俺は以前の記憶を取り戻すことが出来た。 何ともお粗末な話だが、ハルヒとキスをした瞬間、例の閉鎖空間でのハルヒとの顛末を思い出し、それを引き金にするようにしてすべての記憶が蘇ったのだ。 長門的に言うなら、問題が解決したことにより俺の記憶の混濁も解消されたというわけだろう。 事実俺はハルヒとの関係や、それに付随するであろう諸問題について悩んでいたし、どうしようもない状態にあった。 そんなときに階段から転げ落ちたせいで、直面したくない問題から逃げていたらしい。 終わりよければすべてよしですよ、なんて古泉のやつは言っていたが、まあ俺もそれには概ね同意だったりする。 そういった風に、今回の記憶喪失の一件は落着を見た。 涼宮ハルヒは、今日も元気に俺の隣で笑っている。
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人物名鑑:キョン ゲーム内におけるキョン SOS団の団員の男子高校生。長門有希や古泉一樹とは違い、普通の人間。涼宮ハルヒの命令で用事に駆り出されていた帰りで地下鉄に乗ったところ、運悪く魔列車に乗ってしまう。 古泉共々戦闘力は皆無なのでPT内での仕事は後方支援がメイン。リースに船に酔ったパパスと馬犬の看病を頼まれた際はあまり乗り気でなかったものの、ついつい承諾してしまった。 最終部では古泉共々戦車霊夢&ゴールデン魔理沙に捕らえられてしまい、PTにはかなり遅れて合流することに。 ちなみに古泉は原作ではキョンのことを本名で呼ぶ(*1)が、ツクール上でかき消すのが難しいからか本作では「キョンくん」となっている。 原作におけるキョン CV:杉田智和。 「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズの主人公で語り部。本名は一応設定されているものの、非公表。 県立北高校1年5組所属の事なかれ主義の男子高校生。妹がいる。 成績はいつも赤点ギリギリでSOS団で最下位。ポニーテール好き。